北のいわしノート

21世紀の青島幸男(政界以外)を目指している七代目立川談志かぶれの戯言

妖怪の祖先は死人(しびと)にあり:ゾンビではなく“気づかれない死”の系譜

人は、自分が死んだことに気づけるのか?

あなたは今”生きている”と信じているであろう。

それは本当なのか?死んでいると気づいていないだけではないのか?

そして、死んだと気づかない存在を、私たちはどう呼ぶべきなのか。

「死人(しびと)」という言葉が、かつてはごく普通に使われていた。

それは単なる死者の別称ではない。

“死んだことに自覚のない死者”、あるいは“死者であることを隠して存在しつづける者”・・・そんな、日本独自の死生観に基づく幽玄な存在だった。

しびとは、ゾンビではない。

ゾンビは、西洋的終末観に基づいた「死の暴走」であり、「人間の終わり」を象徴する。

しびとはもっと静かで、もっと私的で、もっと・・・近い。

(終わらない夏の怪談話ではない)

しびと:まだ此岸にいる者

仏教の影響もあり、日本では「死後の旅」が語られることが多い。

死んだ者は六道のどこかへと赴き、生まれ変わる。

だが、それは“ちゃんと死ねた者”の話だ。

この世界には、「ちゃんと死ねなかった者」がいる。

死んだことに気づかず、毎朝同じ道を歩き、かつての家に戻り、見えぬ相手に語りかける。

こうした存在が「しびと」だ。

民俗的には“浮遊霊”“迷い霊”などと呼ばれることもあるが、本質は「死に気づいていない=生きているつもりの死者」である。

宗教的に言えば、彼らは供養されていない。

心理学的に言えば、彼らは“自己意識の断絶”にある。

哲学的に言えば、彼らは“存在の座標”を見失っている。

妖怪:しびとの“形”を与えられたもの

しびとは、次第に「輪郭」を持ち始める。

名前を持ち、姿を持ち、伝承の中で役割を持つようになる。

それが、妖怪の誕生である。

たとえば山姥は、山で死んだ老婆の化身だという説がある。

天狗は、戦で討たれた者の変化だと語られた。

河童、鬼、ぬらりひょん・・・その多くに共通するのは、「人ではないが、かつて人だったかもしれない」という曖昧さだ。

しびとが“形”を与えられるとき、そこには集団の想像力が加わる。

死にきれなかった個人は、共同体の中で妖怪として“物語”になる。

それは宗教的な“救済”とは別の、文化的な“変換”であり、哲学的に言えば「死の記号化」、心理学的には「集団トラウマの代償作用」でもある。

幽霊:しびとに感情を与えたもの

そして、近代に入ると「幽霊」が出てくる。

彼らはもう“存在”ではない。“物語”でもない。

感情そのものが死から抜け出して、姿を得たものだ。

四谷怪談』『牡丹灯籠』

そこに登場する幽霊たちは、明確に「私」があり、「あなた」に恨みを持っている。

死者の世界ではなく、生者の世界に感情の残滓を投げ込んでくる。

それは、個人化された“しびと”の最終形とも言える。

宗教学的には、死者供養の失敗による祟りという構図だが、心理学的には「未処理の記憶」が可視化されたもの。

哲学的には、“死”が“意味”を持って再来する現象でもある。

西洋のゾンビとの決定的な違い

ここで、ゾンビとの比較を挟みたい。

視点 しびと ゾンビ
自覚 死を自覚していない 自我を持たず、完全な死体
行動 日常をなぞる 生者を襲う
関係性 村・家・家族との関係の中にいる 他者との無差別的破壊
感情 持つ場合もある(恨み・未練) 感情を持たない
扱い方 成仏・供養・共感 排除・撃退・終末的

ゾンビは、“人間性を失った死体”だ。

しびとは、“人間性を引きずる死者”である。

この違いは、死に対する文化の距離感そのものである。

西洋は死を“異物”として切り離し、日本は死を“風景”として受け入れた。

だから、ゾンビは撃ち殺すが、しびとは弔う。

ここに日本の「八百万神(やおよろずのかみ)文化」が見えるかもしれない。

そう、しびとにも”神”が宿っていると考えたのかも。

そして、いま

現代人は、妖怪を信じない。

幽霊もネタにする。

話題に出さなかったが、妖精に対してはありがたがり可愛いとさえいう。

だが・・・しびと的なものは、今も私たちのまわりに満ちている。

朝、同じ時間に同じバスに乗る老人。

長屋で、ひとことも言葉を発さずに消えた隣人。

日記にだけ残る「生きた痕跡」。

もしかすると、私たち自身が、まだ“自分が死んだことに気づいていない”存在なのかもしれない。

死者は遠くない。

妖怪も幽霊も、私たちの背中にそっと寄り添っているだけだ。

気づくか、気づかないか。

それだけの違いなのだ。


あなたは情報過多な現代社会の中で
死人(しびと)になっていませんか?

構想・構成・整文・レイアウト:北のいわし
ドラフト:ChatGPT Type-S


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